安野光雅さん

 人間が平和に生きるということが美しいこたあ、世界のどこの国にも通じる、自然のきまりだとおもうていい。
このきまりに従うちゅうこたお、つまり自分の国の主権(主権在民)をまもり他の国と同じ立場に立とうとするものの大きい責任なんじゃけー。

 以上はわたしの故郷の津和野弁(広島語圏)で書いた,日本国憲法、前文の一部です。
美しいということは、地球にすむ世界中の人々にとって、どんなに大切なことでしょう。
コンサートに集まった皆さんは、どうかこのことを心のすみにしまっておいてください。

 田舎弁の憲法前文は次のように続いておわります。

 わしらあは、そう信じる。
国の名誉にかけ、国の力の全力をあげて、この尊い、誇りある,目的にむかって進むことを誓う。


喜納昌吉さん 「地球にありがとう!」

 第二次世界大戦が終わって70年、世界は重大な転換点に立っている。地球温暖化やそれに伴う砂漠化は、ついに人類の心の中にも砂漠化を生みだし、先祖を同じくするユダヤ・キリスト・イスラムの世界が、神々の名の下に血肉の争いを繰り広げ、テロの恐怖が人々の心を蝕みはじめている。

 あらゆる蒙昧と迷信を超えてゆくためのテクノロジーとして人類はサイエンスという技法を編み出してきた。しかしその終着点は、自然界に存在しない冥界の王・プルトニウムを生んでしまった。もっとも太陽に近いウランという物質を、畏敬の念も持たず、利権の欲するままに触るならば、そこには人類的規模の自殺が待ち受けているだろう。東日本の震災はまさにその教訓を得る転機ともなりえるはずだ。それは地球を破壊するサイエンスから地球を輝く惑星にするためのサイエンスへと、あるべき姿に戻るチャンスでもある。そのことに目覚めたとき、日本は希望の国として迎えられるだろう。

 転換点に立つ今、世界大戦という冠をかぶった戦争の最大の悲劇の地であるこの広島・長崎・沖縄の心が一つになり目覚めれば、私たちは輝く黄金の未来の扉を開けるためのカギをも創ることができる。

今日の祭りはまさにその出発だ。

 究極の平和のメッセージとは地球と共にダンスをすることである。

 私は宣言する。
地球こそが人類の聖地である。


三枝成章さん「広島初演演奏曲”最後の手紙”について」

 この作品は、戦争で命を落とした兵士たちの切ない希望や絶望と、現実の声を伝えることにより、残酷な戦争によって愛する家族や恋人、友人との絆が割かれることが二度と起こらないようにとの願いで作りました。

ドイツの編集者、ハンス・ワルター・ベア氏が第二次世界大戦で戦死した兵士の声を世界に伝えるため、彼らが残した手紙を送ってほしいと遺族に呼びかけました。その結果1939年から1945年に書かれた2万通以上の手紙が寄せられ、31カ国、202人の兵士の手紙が『人間の声』として1961年に出版されました。

膨大な手紙の中から、2009年に他界した私の親友でありコピーライターの眞木準氏によって、12ヵ国の13通の手紙が選ばれ、それを歌詞とし、男声合唱と管弦楽のための「最後の手紙〜The Last Message」として生まれました。

 彼らの本当の声を私の作品で後に続く世代に残したいと願い、私が『人間の声』に出会った東京藝術大学作曲科の学生だった頃から50年余りを経て、今もなおこの作品に取り組んでいます。

 戦争で命を落とした兵士たち、そしてその悲しみに耐えた家族の思いが、この作品を通じて、すべての人々に平和と救いをもたらすことを願ってやみません。